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注目スピーカー「私が語る、この人の魅力」
ヘンリー・ミンツバーグ Henry Mintzberg
マギル大学 クレゴーン記念講座 教授
まるで、ひとつの生態系のよう。
有機的に世界を観測する「知の巨人」
ハーバード・ビジネス・レビュー 編集部 肱岡 彩
ヘンリー・ミンツバーグ(Prof. Dr. Henry Mintzberg、以下、ミンツバーグ)先生とは、2019年、著書『私たちはどこまで資本主義に従うのか』の編集を担当させていただき、ハーバード・ビジネス・レビューのインタビューの際に直接お会いしました。直近では2021年発行の著書『これからのマネジャーが大切にすべきこと』の編集を担当いたしました。
フレンドリーで人間味溢れる知の巨人
経営学の大家であるミンツバーグ先生ですが、実際にお会いすると壁を一切つくらない温かな方です。親日家で、私がお会いした時は日本に関するエピソードを披露してくださり、話しやすい雰囲気をつくってくださいました。先生のお人柄はその著書にも表れています。
先生の著書は『戦略サファリ』のように分厚いものもありますが、直近の『これからのマネジャーが大切にすべきこと』など、エッセイのようなテイストで、非常に読み進めやすいものもあります。若い世代にもご自分のお考えが伝わりやすいように、読者目線に立ち、書いてくださっているのがわかります。
森羅万象を繋げて捉える、
一人でひとつの生態系のような奥深い方
ミンツバーグ先生は、物事をご自分の目で見て感じることを大切にされています。とても自然がお好きで、お住まいのカナダも自然が豊かですし、日本でも沖ノ島や青森などを好んで旅行されています。
先生と接していると、目の前で起こる物事と、自然の理、どちらもおろそかにせず観測していらっしゃる印象を受けます。2013年に来日され、日本を旅行してから帰国された時、日本で遭遇した飛行機の乗り換えトラブルから日本の失われた20年を語る(https://www.dhbr.net/articles/-/1990)、というエッセイを送ってくださいました。このエッセイをお読みいただくとわかるのですが、目の前の事象からさまざまな観測点を有機的に結び付けてお考えになるため、ミンツバーク先生自体がまるでひとつの生態系のような、とてつもない奥深さをお持ちです。それなのに、とても気さくでチャーミングな方で、お会いした方はみなさん先生のファンになってしまいます。
写真:鈴木愛子
本質を捉える持論と、卓越した先見性
ミンツバーグ先生は「マネジメントに特効薬はない」と言い切り、地に足をつけたマネジメントを重要とし、お高くとまったリーダーシップを批判しています。
また昨今、数字で計測できないものはマネジメントできないといわれる中、ミンツバーグ先生は、数字で計測できないものこそ大事ではないかと仰っています。ミンツバーグ先生のビジネスや経営学の常識に鋭く切り込む視点は、多くのビジネスパーソンに思いがけない発見を与え、心に響くのではないかと思います。また、一歩先を見据えた物事の捉え方、その先見性にはいつも驚きます。
時間が経ってから「あの時先生の仰ったことはこういうことだったんだ」と腑に落ちることが多いのです。『私たちはどこまで資本主義に従うのか』の中で先生は社会的不均衡の拡大に警鐘を鳴らしていらっしゃいますが、これも本が出版された後、社会で盛んに議論されるようになりました。
現場主義を貫き通し、
ひとりひとりに光を当てる
ミンツバーグ先生は、時代がどんなに進もうが、現場目線をキャッチアップし続けています。今も自ら教壇に立ち続け、実践から得られる経験を大切にされています。
写真:鈴木愛子
先生が提唱されている理論に、マネジメントの3要素「アート」「サイエンス」「クラフト」があります。「アート」は今でいうパーパスです。「サイエンス」は定量的なものとして常に必要であり、そして「クラフト」は有機的につくり上げていくプロセスです。
これら3要素の掛け合わせが経営・マネジメントには必要である、という理論です。これはまさに先生の大局観を表していると思います。このように先生は、ものの見方、考え方に対してキーワードを与えてくださいます。回答を与えるのではなく、手を差し伸べてくださる。ひとりひとりの力というものに、希望を見出していらっしゃるのです。
日本では、経営学の大御所としてお名前を知っているにも関わらず、意外とミンツバーグ先生のお考えに触れたことが無い方が多いのではないかと思います。ぜひこの講演を機会に、ミンツバーグ先生に触れてください。きっと、先生の魅力にとりつかれてしまうと思います。
- INTERVIEWEE 語り手
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ハーバード・ビジネス・レビュー 編集部 肱岡 彩
大学卒業後、ダイヤモンド社に入社。営業部を経て、ハーバード・ビジネス・レビュー編集部に所属。ヘンリー・ミンツバーグ氏の著書『これからのマネジャーが大切にすべきこと』、『私たちはどこまで資本主義に従うのか』のほか、『世界標準の経営理論』などの編集を担当。
- SPEAKER 講師
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