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【講演レビュー記事】 マーケティングによる「非破壊的創造」とは?

アカデミックなマーケティング理論を学者として研究し、実務家として実際に試し、実践していく。社会にパワフルなエールを送っている本講演は、「マーケティングによる社会変革で、より良い世界を再定義する」がテーマである。

スピーカーは、早稲田大学ビジネススクールでマーケティングの教授を務める川上智子教授。マーケティング国際研究所の初代所長、ブルー・オーシャン戦略研究所の創設者でもあり、マーケティングが社会変革にどう貢献できるか、マーケティング理論とブルー・オーシャン戦略の融合を研究している。

川上教授が、持続可能性に関わる課題の研究を始めたきっかけは、コトラー教授の著書『資本主義に希望はある』だったという。

ブルー・オーシャン戦略とは、競争のない市場を開拓し、新たな需要を創造する戦略であり、企業は高付加価値と低コストの両立を追求する。逆に、既存の市場で競争し、需要を取り合う戦略は、レッド・オーシャン戦略である。

マーケティングによる非破壊的創造というコンセプトは、ブルー・オーシャン戦略の著者 チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏によって提唱された。 著者との親交もある川上教授は、講演の中で、実際の日本企業の非破壊的創造の事例を中心に、豊富な映像とスライドで紹介している。

銀行がカバーできない領域を作り出した「クラウドファンディング」、日本の一時駐車場を改革した「パーク24」、傘のシェアリングサービス「アイカサ」など。これらはIoT、ICTの技術を使い、循環型経済が示すように、無駄な資源を削減し、社会的便益を向上させる、マーケティングによる非破壊的創造の好例である。

また、川上教授がプロデュースする、学術的な実験プロジェクト「クラシカエール」の紹介も必見である。

マーケティングとブルー・オーシャン戦略を応用し、クラシック音楽で人々の生活を変えることがコンセプトの「クラシカエール」は、クラシックコンサートが新技術で実験を行う、いわば舞台となっている。

モーツァルトを学習したAIが作曲した楽曲、サンゴの産卵、伝統舞踊とクラシック音楽の融合等が映像で紹介されているので、ぜひ見て欲しい。

川上教授の講演には、コトラー教授が、著書『資本主義に希望はある』で提唱した「物質主義以外の生き方」、「生涯にわたって満足できる生き方」へのヒント、そして、マーケティングによる非破壊的創造、より良い世界に繋げていくための企業の在り方等への問いかけが詰まっている。

(ワールド マーケティング サミット編集部)

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