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【講演レビュー記事】 ドラッカー、米国政府の変革を手厳しく批判ー現在に通じるマネジメントの本質

現在のビジネスシーンにおいて「マネジメント」という言葉を見ない日はあるだろうか。

このマネジメントの概念を考えた最初の人物が、ドラッカー博士である。マネジメントの父、自己啓発の祖などと呼ばれ、政府、企業、世界の人々に影響を与えた。没後18年経った今も、なお称えられる最高の哲人である。

フィリップ・コトラー教授は、生前のドラッカー博士と深い親交があり、「初めてのピーターからの電話は米国大統領からの電話より嬉しかった」と語るほど、博士を尊敬していた。「ピーターは近代マネジメントの父として知られているだけなく、マーケティングの分野でも先駆者だった。」また「マーケティングは、NPOの経営と生活者にどう役立つのか?」という共通の研究テーマを持っていた。(2013年12月 日経新聞「私の履歴書」)

さて、今回の講演は、1994年のインタビューであり、「ドラッカーの肉声」を、日本語のボイスオーバーで視聴できる貴重な映像である。かつて、ビル・クリントン大統領の政権移行チーム、そして連邦品質研究所に務めたミシェル・ハント氏が、ドラッカー博士に対して、米国政府の改革についてインタビューしている。

当時、連邦品質研究所の使命は、米国政府の改革を行うことであり、アル・ゴア副大統領が主導した「Creating a Government that Works Better and Cost Less(より機能し、より低コストな政府を創る)」という超党派の取り組みであった。ミシェルは、改革実行の為、世界的に著名なオピニオンリーダー達とパートナーシップを構築。ピーター・ドラッカーもその一人であった。

人事管理局や教育省、外務省など、政府の要職に就く人物たち、といった聴衆の面前であっても、ドラッカー博士は、「連邦政府の職員はやる気がない」「政府には変化に対する抵抗や惰性が深く根付いている」等と、政府の改革を手厳しく批判している。

一方、一つひとつの指摘に対し、それぞれの問題点を深く掘り下げ、解決策を提示するドラッカー博士の発言は、愛に満ちている。政府が大きな労力を費やした取り組みを「とるに足らない」と言いながらも、この取り組みの真の成果は、連邦政府に改革への受容性と変化への意欲を生み出したことである、と語っているのだ。そしてこの機運を活かすために、何が本当に必要なのかを考えるべきだ、と促している。

さらに、政府は“高い自尊心を持った状態”に移行すべきと提言し、そのためには“継続的改善習慣の組織横断的な確立”が絶対に必要だと述べている。「継続的改善の習慣ほど、その組織で働く者の自尊心を高めることはない」と発言しているが、これはドラッカー博士が日本人から教わったことである、という部分にも注目だ。

ドラッカー博士の提言は、そのまま現代にも通じ、政府のみならず、企業をはじめ、あらゆる組織に適用できる普遍の法則と言えよう。

ドラッカー博士本人の声で紡ぎ出される珠玉の言葉を、ぜひ聴いてみて欲しい。隅々からさまざま気付きがあることができるだろう。

(ワールド マーケティング サミット編集部)

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