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【講演レビュー記事】 ブロックチェーン技術によって実現する、ウェブ3.0の実現可能性と課題
Twitterの創業者、ジャック・ドーシー氏が出品した、同氏の初ツイートのNFTが、2021年3月、約3億円で落札された。NFT(Non-Fungible Token、代替不可能なトークン)は、ブロックチェーン技術を活用した 「偽造不可な鑑定書&所有証明書付きのデジタルデータ」である。NFTは、アート、ゲーム、音楽などの分野で近年注目を集めており、ビープル(Beeple)という世界で最も有名なNFTアーティストも誕生。同氏の「Everydays—The First 5000 Days」には、79億円の価値が付いた。
これらのデジタル資産売買のニュースを聞き、「Web3.0」の世界が、まさに今現実となってきていると感じた人も多いだろう。本講演にて、Web3.0の可能性に着目しながら、デジタルとマネタリゼーションについて分析しているのは、消費者研究の分野で国際的に著名なラッセル・ベルク教授だ。
ベルク教授は、2002年に開始し、メタバースの先駆けとなった「セカンドライフ」や、Meta社のメタバース「Horizon Worlds」等を例に挙げ、暗号通貨、NFT、そして、これらがどのようにWeb3.0と結びついているかを解説し、可能性と課題を指摘している。
Web3.0は、暗号資産イーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッド氏によって2014年に提唱され、「非中央集権型のインターネット」と呼ばれる概念である。
これまでの約20年間はWeb2.0の世界と呼ばれ、GoogleやAmazon等、プラットフォーマーである巨大テック企業がインターネットに大きな影響を与える、いわゆる「中央集権型インターネット」であった。一方、Web3.0では、暗号資産に使われるブロックチェーン技術を基盤とすることで、管理主体を持たずに、透明性とセキュリティの高い分散型Webサービスが実現すると考えられている。
このWeb3.0の到来に伴い、メタバース、SocialToken、NFT(非代替性トークン)、DeFi、といったさまざまな技術が各産業分野で導入され始めている。しかし、ベルク教授は、「魔法の世界であるセカンドライフのビジョンは、10年経った今も実現化されていない。メタバースの実現には10年かかるといわれているが、果たしてビジョンは実現されるのだろうか」と厳しく指摘する。
さらに、ベルク教授は、デジタル通貨を認めていない中国や、想像上の土地所有権の管理などに言及し、
「いくつも存在する異なる世界・空間をひとつにまとめるにはどうすればよいのかが、メタバースの現実的な問題」と語る。
Web3.0では、これまでにない可能性が期待でき、真のグローバル市場が確立されるといわれる一方で、法的整備の遅延や、概念論と経済論の混在が現実問題として存在していることがわかる。
今や、メタバースやweb3.0の影響を受ける産業は多く存在する。変化の時代に生きる企業・ビジネスパーソンは、めまぐるしいスピードで変わりゆく世界を見定め、適応していく必要がある。ベルク博士のこの講演は、その一助となるだろう。
(ワールド マーケティング サミット編集部)