コトラー先生と私は、長らく平和のマーケティングについて意見を交換してきた。

第1回で述べた、幻のタイでのWMSでは、マーケティング・ピースをメインテーマの一つにする計画があり、私も日本からの推薦スピーカーと一緒に会議に顔を出す予定だった。

そんな事もあり、第1回目のWMSJでも平和のマーケティングを大きく取り上げたかったが、残念ながら諸事情で部分的にしか実現できなかった。しかし広島県の湯崎知事が、コトラー先生の「私の履歴書」に記載された平和のマーケティングに着目し、2015年のWMSJに参加した折にコトラー先生を広島に招待する話が進んだ。

そして2016年10月、平和のマーケティングにもフォーカスを当てた第2回World Business Conference for World Peace（国際平和のための世界経済人会議～平和のためのマーケティング～）が、コトラー先生をゲスト・スピーカーに迎えて広島で開催された。

ちょうどルーマニアのネデレア教授がマーケティング界で初めて平和を取り上げた本を出版し、この会議でPeace Marketing （2016年）と題する著作が参加者に配布された。

この本にはコトラー先生、湯崎 広島県知事、西園寺五井平和財団理事長に加え、私も寄稿している。平和のマーケティングは、 第6回目（2019年）に開催されたWMSJ講演者の一人である早稲田大学の川上智子教授等と共に、現在もコトラー先生によって研究が進められている。

マーケティングだけでは世界平和の実現は難しいかも知れないが、WMS全体のキーテーマが「Creating better world through Marketing」であることを想起すれば、私はすべてのマーケターが世界平和に真剣に取り組む大切さを心から訴えたい。