連載「プロが選んだオススメ講演」
第7回 プロが選んだおススメ講演 加治慶光 株式会社シナモン取締役会長兼CSDO 神奈川県顧問 鎌倉市参与
“ アーカイブ動画を長期間 見ることができる今年のサミット。本を一緒に読むことで、学びが立体的になる”
AIで世界はどう変わるのか ナンシー・ネムス氏
私、現在AIの会社「シナモン」で会長職をしておりまして、1本目のおススメは、 ナンシー・ネムスさんの“AIで世界はどう変わる?”という講演です。
この講演と合わせて読むと良い本がありまして、前職アクセンチュアが出版した「HUMAN+MACHINE 人間+マシンAI時代の8つの融合スキル」という本です。人間とマシンがどういうふうに共存していくのかっていう話でございます。ナンシーの講演を見ると、一気にこれからAIの世界ってどうなるのかっていう世界が見渡せます。
マーケティングとDXの融合 コトラー教授
コトラー教授は、私が学んだアメリカのビジネススクール(ケロッグ経営大学院)の教授であります。コトラー教授は、今回もDXとかAIの重要性について言及されていました。ぜひ、江端さんの著書「マーケティング視点のDX」も一緒に読まれると良いと思います。
興味深いのは、コトラー先生が、マーケティングとDXを合体させて、さらに、マズロー欲求5段階をマーケティングの1.0から4.0まで紐付けている点です。マズローの欲求は、非常に興味深くて、一番上の5段階目が「自己実現欲求」です。つまり5段階のマズローの一番上まで行くと、マーケティング4.0である、とおっしゃられています(諸説ありますが、本書においては解釈一例として言及されています)。
マズローの法則 6段階目があった サンドラ・ヴァンダーメルウェ教授
サンドラさんは、次のニュー・ノーマル、コロナ後のマズローの法則はどうなるのかという視点で話されています。マズローの法則は5段階しかなかったんですけど、何と、この人は、6段階目があるといっています。それが「自己超越」という概念です。この自己超越、セルフ・トランセンデンスというものについて語っています。
マーケティング5.0への応用 ヘルマワン・カルタジャヤ氏
「自己超越」が出てきて、これまでがマーケティング4.0だったので、次は「マーケティング5.0」を出したいねっていう話になるわけです。ここで、ヘルマワン・カルタジャヤさんの「”CI-ELゲームの後で勝つ」という講演をぜひご覧いただきたいのです。ここでご紹介したいのが「Marketing 5.0: Technology for Humanity (英語版)」という本ですね。マズローの6段階目の自己超越というものと、マーケティング5.0っていうのが紐づいています。この本は、来年に出版されるそうです。つまり、
マズローの第五段階=マーケティング4.0
マズローの第六段階=マーケティング5.0
という最先端の進化について、これらの講演と本を組み合わせることについて考えることができるわけです。
ヘルマワンのCI-ELというのは、クリエイティビティ、イノベーション、アントレプレナーシップ、リーダーシップです。彼のこのモデルの中で、イーロンマスク、リチャードブランソン、孫正義さん、ジャックマーたちとの対談で知りえたことなど語っていまして、彼も、ヒューマン、愛、さらに、EQ、IQに重ねて、「Love-Q」という言葉も出ていました。AIが一般的になっていくからこそ、こういった人間的な要素の重要性も加速していくことでしょう。
ヒューマン・リーダーシップを作るには ロベルト・クロシ氏
ロベルト・クロシさんは、マイクロソフト社でドバイ向け営業を担当されている方です。彼は、「愛」や「幸せ」がすごく重要な要素になってくると語っています。そして、ヒューマン・リーダーシップについて、具体的にどうしたらいいのかお話しされています。
良心的な資本主義 ラジュ・シソディア氏
ラジュ・シソディアさんは、大変有名な「コンシャス・キャピタリズム(良心的な資本主義)」という概念を提唱されている方です。ビジネスを通して、人間性を向上させる良心的な資本主義が必要だというお話をされています。
ヒューマナイジング・ストラテジー 野中 郁次郎 教授
一橋大学の野中先生がおっしゃっているのは、分析をしすぎるのではなく、知的コンバットでどんどん深くやってこうじゃないかっていうことです。そのお話は、とても素晴らしいお話でして、なんとそれが「ワイズ・カンパニー 知識創造から知識実践への新しいモデル」という本になっています。読むのに知的コンバットが必要とされる本ですが、ぜひ読んでみてください。
愛とユーモアの大切さを語る ジェニファー・アーカー教授
最後に多数の方がおっしゃっておられましたけど、私が一番良かったなと思ったのは、ジェニファー・アーカーさんでありまして、「幸福の再考」というテーマでお話しされています。三つ重要なことがあると。これからのリーダーには、大胆さ、面白さ、ユーモア、笑い、そして愛。愛を感じるための秘密についても、ちゃんと教えてくれています。Loving Kindness Methodといいまして、これを実践すると、人々に優しくなれて、自己超越した、マーケティング5.0的なリーダーになれるということをおっしゃっています。
サミット全体の感想とおススメ活用法
今回のワールドマーケティングサミットは、コロナ禍の状況下ですが、これだけ長い期間、アーカイブ動画が見られるという事の重要性をぜひ実感していただきたいなと思います。また、先ほど紹介しましたように、本と一緒に読んでみると、今回、デジタルで開催されたサミットの意味合いが広がって、その学びも立体的になるのではないかと思います。
アーカイブ動画は、80本以上あります。どれも大変見応えのある内容ですので、ぜひ皆様と一緒に楽しめればと思います。
サミットの学びが深まる、おススメの本
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第1回 徳力 基彦
“僕は、ワールドマーケティングサミットというのは、未来の予言が含まれていると思う”
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第2回 山本 晶
“著名なマーケティング研究者が一堂に会した貴重な機会。端末2台を駆使して、学びを深めよう。”
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第3回 板橋 祐一
“海外でしか聞けなかった高名なスピーカーたちの講演が、アーカイブ動画で学べる”
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第4回 石橋 昌文
“デジタルを活用し、グローバルに開催。さまざまなトピックから、興味がある分野の講演を自由に選べる”
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第5回 江端 浩人
“マーケターの視点で先を読み、問題解決することで、ビジネスに価値を加えられる”
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第6回 鈴木 智子
“今回のeWMSでは、ヒューマニズムへの回帰が印象に残りました”
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第7回 加治 慶光
“アーカイブ動画を長期間 見ることができる今年のサミット。本を一緒に読むことで、学びが立体的になる”