連載「プロが選んだオススメ講演」
第2回 プロが選んだおススメ講演 山本晶 慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 准教授
“著名なマーケティング研究者が一堂に会した貴重な機会。端末2台を駆使して、学びを深めよう。”
マーケティングの効果測定を学ぶ ドミニク・ハンセンズ教授
ドミニク・ハンセンズ先生は、マーケティングの効果測定を計量経済的なアプローチで長年研究されてきた研究者です。今回の講演では、過去数十年分のトップジャーナルに掲載された効果測定に関する論文のメタアナリシスの結果を紹介しています。広告やセールスプロモーションによって売上にどのようなインパクトがあったのか、というテーマは多くの実務家にとって関心が高いと思いますが、この講演では広告や値引きの弾力性について、数式抜きでわかりやすく語られています。
カスタマー・エンゲージメント研究の大家 V.クマー教授
V・クマー先生は、カスタマー・エンゲージメント行動を定式化して測定する研究をされています。この講演では製品のバージョンアップとカスタマー・エンゲージメントの関係についての研究成果を紹介されていました。対象となる概念をどのように測定するか定義したうえで、モデルの推定結果を報告されているのですが、発表のフォーマットは学会発表とほぼ同じです。カスタマー・エンゲージメント行動の講演としても、学術的な研究としても注目です。
「幸福」をテーマに語る ジェニファー・アーカー教授
ジェニファー・アーカー先生の講演は、内容はもちろんですが、話し方も含めて大変すばらしく、印象に残りました。「幸福」については今回多くの登壇者が触れており、現在の経営学やマーケティングにおいて大きなテーマになっていることを改めて実感しました。スタンフォード大学の彼女の担当授業のウェブサイトでは、詳細なシラバスが公開されていて、どのようなゲストを呼んで、どのような論文や書籍を学生に読ませているかを知ることができます。講演を聞きながら追加情報を調べるとさらに学びが深まると思います。
価値最大化主義からの脱却 野中 郁次郎 教授
講演の中で、「価値最大化主義からの脱却」ということを明確におっしゃっていました。価値を最大化することよりも、人間らしさ、コミュニティ、道徳がこれからの社会では重要だというメッセージが印象的でした。また、非常に内容の濃いご講演なので、良い意味でスライドの情報量が多いです。一時停止をしながらじっくりと学ぶことができるのは、録画された動画ならではのメリットかもしれません。
マーケティング5.0 イワン・セティアワン氏
コトラー教授とその共著者は、これまでマーケティング3.0、4.0 と書籍を出版してきました。今回のサミットでは、『マーケティング5.0』の書籍が(まもなく)出版が発表されていました。5.0はどのような内容になっているのか、出版を心待ちにしています。
サミットのおススメ活用法
今回のサミットのように、世界的に著名なマーケティング研究者の講演をまとめて見られる機会は、なかなかないと思います。ぜひ興味がある動画を積極的に見ていただいて、面白いと思ったら、その講演者を検索してみてください。研究者による実務家向けの講演は、その研究者の研究や授業のエッセンスの抜粋です。講演の元ネタとなる論文や授業内容を見ると、学びが更に深まります。オンライン・カンファレンスならではの楽しみ方としては、端末を複数立ち上げ、検索しながら講演を聞く、というのが私のおすすめです。
-
第1回 徳力 基彦
“僕は、ワールドマーケティングサミットというのは、未来の予言が含まれていると思う”
-
第2回 山本 晶
“著名なマーケティング研究者が一堂に会した貴重な機会。端末2台を駆使して、学びを深めよう。”
-
第3回 板橋 祐一
“海外でしか聞けなかった高名なスピーカーたちの講演が、アーカイブ動画で学べる”
-
第4回 石橋 昌文
“デジタルを活用し、グローバルに開催。さまざまなトピックから、興味がある分野の講演を自由に選べる”
-
第5回 江端 浩人
“マーケターの視点で先を読み、問題解決することで、ビジネスに価値を加えられる”
-
第6回 鈴木 智子
“今回のeWMSでは、ヒューマニズムへの回帰が印象に残りました”
-
第7回 加治 慶光
“アーカイブ動画を長期間 見ることができる今年のサミット。本を一緒に読むことで、学びが立体的になる”